「なぁ」

「なに?」

学校での昼休み。

学年の違う風野くんと、長くいられる時間。

風野くんはふと思い出したように言った。

「ことわざでさ、『目に入れても痛くない』ってあるだろ?」

「うん」

「あれってどういう意味だ?」

「んーー、その人?子?が可愛くて可愛くて目に入れても痛くないぐらい大好きって感じかな」

「ふーん、それって目に入れる意味あるか?」

風野くんはそう言って、真剣な顔をして私に問いかけてくる。

あんまり真剣に聞いてくるものだから、つい笑みが零れる。

「もう、ことわざなんだからそんなこと言ってちゃキリがないでしょ」

「だってさ、ことわざって結構事実から来てるもの多くないか?」

「えーそうかな?」

「たとえば『二階から目薬』。これはそんなことできるわけないって意味だろ。実際無理だ」

「確かに」

「ああ、床があるのにできるわけがねぇ」

………………

「風野くん…?」

「あれ、『天井から目薬』だっけ?どっちにしろ天井に貼り付けるわけでもねぇし、無理だな」

何か、何処かずれてる。

「風野くーん…?」

「?なんだよ」

「それはちょっと違うと思うよ」

「え、マジ?」

「うん『二階から目薬』ってそんな高さから正確に目に入れれるわけない、だと思うよ」

「マジかよ…」

驚きながら、間違えて覚えてたことが恥ずかしいのか私から目を逸らす。

「あとね、『目に入れても痛くない』っていうのは目に入れてたらずっと見てられるでしょ?」

何かで読んだ知識。自分なりの解釈も入ってるけど、間違いじゃないと思う。

「大好きで、可愛くてしょうがないからずっとずっと見ていたい。自分から離れないでって気持ちの現われだと思うよ」

「へぇ…でも、俺は嫌だな」

「そう?」

「深雪も妹も可愛いけど、一番可愛いと思うのは一緒にいて、一緒に笑ってるときだろ?」

大体、このことわざは身内に使うことが多いんだけど、風野くんの妹と一緒に並べられるなんて、

「目に入れるより、ずっと傍にいて離さないっていう方がお互い幸せだと思うんだけど」

家族と同じくらい想われてるってことだと思う。

「そうだね。でも、きっと離れていくって分かってるから入れておきたいんじゃない?」

「…俺はお前を離さねーからな」

「うん。離れる気なんてないよ」

「ん、まぁ現実に考えてさ、やっぱり目に入れるのは痛いと思う」

結局、そういう結論に行く風野くんに笑って、

「だから現実で考えちゃダメだってば」

今日の楽しい昼休みはおしまい。






〜END〜


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なんか途中で急に真面目になった気がする;ことわざなんて現実に考えたらダメだよね。

おかしいなー、ギャグを書くぐらいのつもりで書いてたはずなのに。

書いたことわざは自分解釈が入ってるので全部を間に受けないでくださいね。

今回、タイトルを『確かに恋だった』様から使わせて頂きました。