「穂波くんっ」
「なに?どうしたの?すごく嬉しそうだけど」
「うん。あのね、映画の試写会のチケットが当たったの」
お母さんが適当に応募してみて当たったチケット。
特別見たかったってわけじゃないけど、当たると嬉しくなる。
「へぇー、すごいね。何の映画?」
「えっと、恋愛ものみたいなんだけど…」
穂波くんって恋愛ものとか興味無さそうだけど。
「一緒に行ってくれる?」
「いいよ」
「本当!?」
「もちろん。まぁ、映画自体に興味はないんだけど、君といられるならなんでも」
やっぱり、でも一緒に行けて嬉しい。
「じゃあ待ち合わせは――――」
「支倉さん」
「穂波くん!ごめんね、待った?」
「そんなことないよ、時間にだって遅れてないし」
「良かった」
いつ見ても、穂波くんはかっこいいなぁ。
いつもの格好もテニスのユニフォームもかっこいいけど、私服はあんまり見ないから新鮮。
「あ、そうだ」
「なに?」
「今日の格好、可愛いね」
一気に顔が赤くなるのが分かる。
「い、行こ!」
隠すように急かしたけど、きっと穂波くんにはお見通し。
「!…美味しいね」
「でしょ?前に友達と見つけて、今度は穂波くんと行きたいなーって思ってたの」
路地を少し入ったところにあるクレープ屋さん。
普通にしてたら見逃すところにあるのにすごく美味しくて、見つけたのが本当に偶然だったから嬉しかったお店。
「ここならデザートじゃないクレープもあるし、お昼にちょうどいいでしょ?」
「そうだね。こんなところにあるのに、繁盛してるっていうのも不思議だね」
「リピーターが多いんじゃない?」
「それもそうだね」
話すのは学校のこと、お互いのこと、友達のこと、あんな事件があったのにそのおかげで今は幸せ。
「そろそろ行こうか」
「うん」
映画のストーリーは一度別れた恋人が、もう一度出会って最初からやり直す話。
紆余曲折はあったけど、もちろん最後は結ばれてハッピーエンド。
「映画、良かったね。最後泣いちゃった」
「そうだね、元彼が出てきたときはまだ!?って思ったけど」
確かに、結ばれそうになったところに元彼が出てきたのは驚いた。
「やっぱり物語はハッピーエンドがいいね」
「…そうかな」
「…?バッドエンドの方がいいの?」
「ふふっそうじゃないよ」
「?」
穂波くんの言ってる意味が分からなくて首を傾げる。
「たとえ幸せでも、エンドってことはそこで終わりでしょ?」
物語はそういうものじゃないのか、と思う。
「僕は今、幸せだけどここで終わったらもうそれ以上はないってこと」
「?うん」
「僕はもっと支倉さんといたいし、もっといろんなことがしたい。だから、まだ」
…なんとなく、穂波くんの言いたいことが分かった。
「エンドはいらない」
「うん。私も、いらない」
〜END〜
戻る
エンドはいらないって言った直後のエンドって…なんかごめんね穂波。
なんかこのお題見た瞬間、穂波だと思いました。なんでかわかんないけど。
この中に出てくる映画はテキトーーに作ったのでモデルとかモチーフの映画はありませんよ。
背景は物語には終わりがあるよってことで…
今回、タイトルを『確かに恋だった』様から使わせて頂きました。