葵先輩との婚約発表パーティー――

お互い、名前で呼び合うことにも敬語を使わないことにも慣れてきた頃だった。

もう葵先輩と共に行くと決めたから後悔はないけど…

やっぱり葵先輩にはもっと相応しい人がいるんじゃないか、そう思えて仕方がない。

葵先輩が贈ってくれたこのドレスも葵先輩は褒めてくれたけどどうしても似合ってる気がしない。

身分のつりあわない私を婚約者にする為に葵先輩が身を尽くしてくれたのは知ってる、けど…

『この度は―――』

葵先輩のスピーチもとても遠い世界に思えて、本当に私なんかでいいのか、すごく不安。

『こちらが私の婚約者、支倉深雪さんです』

名前呼ばれたらお辞儀っと。


スピーチも終わって今は社長さんとか偉い人に挨拶回り。

こんなの平然と出来る葵先輩はわかってたことだけどもう育ち方が違うんだよね。

「…庶民のくせに…」

「…何故あの聡明な葵次期総帥があんな小娘を…」

…やっぱり場違いなのかな。桜葉くんが心配してくれたけどその通りだな。

「…こんなガキを選ぶなんて葵の次期総帥も高が知れるな…」

私のことは事実だけど私のせいで葵先輩が…

「深雪?どうかしたか?」

「いっいえ!なんでもありません」

「そうか?」

葵先輩に迷惑がかからないようにせめて笑っておこう。

「水央君も何故そのような子に?君ならもっと相応しい人が居ただろう」

この人わざと言ってるよね…

「……深雪、ちょっとこちらへ」

「水央?」

葵先輩は私の手を取ってステージまで行くとマイクを持って、

『皆、何故私が彼女を選んだか憶測で発言してると思うが、』

葵先輩は堂々と言った。

『僕は彼女を愛している。他の者の意見に耳を傾けるつもりは毛頭ない』

あまりにもきっぱりと言うものだから会場は一気に静かになった。

「み、水央何言って…」

「僕は事実を言ったまでだが?」

「じ、じつって」

その後も挨拶をして回ったけど、もう誰も陰口は言わなかった。というより言えなかったのだと思う。


「今日は済まなかった。いくらしなくてはならないことと言えど君に嫌な思いをさせてしまった」

「そんな、私は大丈夫だから…」

葵先輩はパーティーが終わった後、私に頭を下げた。

「それでも君は始終浮かない顔をしていた。パーティーに来ていた招待客が原因だろう?」

「確かにそうだけど…」

「僕は君を出来る限り安全な場所で傷つかないように守りたい。だが…」

「水央。私ね、私のせいで水央に迷惑がかかるのが嫌なの」

正直な気持ちだった。

「私なんかと婚約したから、水央まで悪口言われてすごくつりあってない気がして…」

「さっきも言ったが僕は君を愛しているし、自分の意見の大切さを教えてくれた君以外考えられない」

「水央…ありがとう」

やっぱり葵先輩と共に歩んで行けることに後悔なんてあるはずもなかった。






〜END〜


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なんかよく分からなくなった…まぁいいや。多分もう葵先輩は書かないと思うし。

公式ガイドブックの小説で名前呼び&敬語無しって言ってたしプロポーズしてたから…

この手の話は葵先輩しか書けないよね。とりあえずずっと頭に流れてたセリフが書けて満足です。

是非感想お聞かせください。