俺は一緒に帰る約束をしている彼女を迎えに行くところだ。
『今日ちょっと遅くなるから先帰ってて』
『じゃあ教室で待ってる』
そんな些細なメールでのやり取りでさえ、嬉しく思う。
――ガラッ
「深雪ー、帰ろーぜ」
「かっ風野くん!?」
…なんか今、すげー勢いで背向けられたんだけど、後ろ向いてゴソゴソやってるし…
前にはゴーグルのにーちゃん座ってるし。
「それじゃ、深雪。頑張れよ」
「うん!ありがとう、桜葉くん!」
ぱっと顔を上げてお礼言ってるけど、俺には何が起こってるのかさっぱり分かんねぇ。
「何してんだよ」
「べっつにー。深雪に聞いてみれば?」
幼馴染で、同い年で、同じクラスだからってムカつく…
「なー、さっきゴーグルのにーちゃんと何話してたんだよ」
「な、なんでもないよ!」
「なんでもなくないだろ、お礼言ってたし」
「え…えっと」
あー、今すげー考えてるなー。何隠してんだ?
「勉強!勉強教えてもらってたの!」
「深雪の方が頭良くなかったっけ?」
「う…」
「ま、浮気じゃねーならいーけど」
「浮気なんかするわけないでしょ!桜葉くんだよ!?」
うわー、ゴーグルのにーちゃんご愁傷様。
「そうだ!もうすぐクリスマスだよね!」
「そーいや、そうだな」
今、話題が変わったことにあからさまにほっとしてる。ホント、何なんだよ…
「風野くん、24日か25日空いてる?」
「24はバイト入ってるけど、25なら空いてるぜ」
「本当!?だったら25日デートできる?」
「おう、良かったな。俺の予定が空いてて」
「もー、普通は空けとくものでしょー」
そう言ってクスクス笑ってるのはホント可愛いと思う。いや、深雪は可愛いけどな!
しっかしさっきの隠し事はホント何なんだ?
その後は待ち合わせの場所とか時間とかの話して、
ひと段落ついたところでもう一回聞いてみた。
「なー深雪、さっきのホントに何?」
すっと、また慌てて、
「な、内緒!」
「内緒って…」
「…あ、じゃあ送ってくれてありがとう」
「え、あ」
しまった…もう、着いたのか。さみーし、ずっと外にいさせるわけにもいかねーよな。
「じゃーな、深雪。愛してるぜ」
「か、風野くん!!」
教えてくんなかったしこれぐらいいーだろ。
それからクリスマスまで俺は何か隠し事をされるけど、
まさか自分の為とは思いもしなかった。
〜END〜
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はい。【君がいるから特別になる】の前の話です。
あー、今すげー考えてるなー。が書きたかったんです。風野好きだー。
愛してるぜ。は言うか分かんなかったけど言わせたかっただけです。
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