羅刹になってから久しぶりに昼間に起きた。
太陽の光は辛いけど出来るだけ明るい景色を見てたくて縁側の日陰でぼーっと外を見てた。
それなのに太陽の光が辛いのを益々実感して嫌な感情が胸に溢れてくる。
庭の草木に水をやっていた千鶴はそんなオレを見つけて心配そうに「大丈夫?」と聞いてきた。
大丈夫だって笑ってやると嬉しそうに隣に座った。
「平助君、今日はどうしたの?」
「んー、なんか目が覚めたっつーか…ついさっきだし、太陽も正直ちょっと辛いんだけどさ」
「そっか…」
そう言った千鶴は不安そうな顔だったけどやっぱり少し嬉しそうな顔だった。
「そうだ!この前、原田さんが――――」
千鶴が話す新選組の皆の話はオレが知らない話でオレがいなくても――いない間も――充分楽しそうだった。
「千鶴は何かいいことでもあったのか?」
「え!?何で?」
当たってたのか、びっくりした顔してる。
「ずっと嬉しそうな表情してる」
「そんな顔してる?」
「おう」
うなずくと千鶴は恥ずかしそうに頬に手を当てていた。何か今日はいつもに増して表情がよく変わるな。
「幻滅しない?」
「しねーよ。てか幻滅するようなことなのか?」
「だって…そ、その…平助君が…」
「オレ?」
「お昼に起きてるの久しぶりでしょ?一緒にいれるのが嬉しくて…」
千鶴の言葉は嬉しいのに、嫌な気持ちが止まらなくて、気付いたら思ってもない事を言ってた。
「…昼間に起きてる奴なんてオレじゃなくてもいっぱいいるじゃん」
こんなことが言いたかったんじゃないのに。
「オレがいなくたって楽しそうだし、千鶴だってそっちに行った方が昼にいねぇオレといるより楽しいんじゃねぇの?」
―――バシャッ!!
千鶴は泣きそうな顔して、庭に撒くはずだった水をオレにぶっかけた。
「…千鶴?」
「平助君、見て」
千鶴はそう言うともう一度地面に水を撒き始めた。水に光が反射して――
「に、じ?」
「うん。この虹、私たちにしか見えてないよね?それと一緒」
言ってる意味が分からなくてオレは首を傾げる。
「この虹が私たちにしか見えてないのと同じなの。」
「何が?」
「私が楽しいと思うことは私が決めるの。嬉しいことも、悲しいことも私にとってを決めるのは私」
さっきから泣きそうな表情のまま、
「他人から見た幸せじゃない、私が幸せと思えたらそれが幸せなの。私が一緒にいたいと思うのは平助君。楽しいのは平助君」
千鶴は続けて、
「昼間だからじゃない。今はまだお昼だから、いつもより長く平助君といれると思ったのが嬉しかったの」
泣いた。
「だから――他の人なんて言わないで」
「ちづ「おっ!平助!」…新八っつぁん」
「昼に起きてるなんて珍し…って何、千鶴ちゃん泣かせてんだよ!」
「えっ!あ、あのこれは「言うな、千鶴ちゃん!」
「え、ちょ、新八っつぁん――いっ!てーー…」
「へ、平助君!」
「女の子を泣かせるたぁどういうことだ平助!」
新八っつぁん思いっきり殴りやがって、あーズキズキする…自業自得か。
「なっ永倉さん!あのこれは私が勝手に泣いてしまっただけで平助君は関係ないんです!平助君は何もしてませんから!」
「…千鶴ちゃんがそこまで言うのならこれだけにしといてやるよ」
新八っつぁんはそう言って去っていったけど、千鶴を泣かせたのは確かだ。
「平助君、大丈夫?ごめんね。私が泣いちゃったせいで…」
「…千鶴は何も悪くねーじゃん。泣かせたのオレだし、新八っつぁんに殴られんのも当たり前だろ」
「で、でも」
「ごめんな…千鶴。お前が言ってくれた言葉も本当は嬉しかったのに」
「平助君…」
「オレも千鶴といるのが楽しい。苦しくても皆といて良かったと思う」
「ううん。私の方こそ平助君に会えて…こうして一緒にいられて良かった」
「おまえの言うとおりだよな。オレが幸せだと思えるならそれでいいよな!」
「うん!」
やっぱり千鶴ってすげー女だよな。オレはこいつに会えたこと自体が幸せなのかもな。
〜終〜
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やっと書き終わったー…もう予想外に新八っつぁんは出てくるし台詞は書いてて恥ずかしくなるしどうしようかと…
この虹は教科書(国語)に載ってる吉野弘さんが書いた【虹の足】という詩からこんな話書きたいなーと妄想してできた話です。
ただ【虹の足】は他人には見えて自分には見えない幸福の中で幸福に生きているなのでこの話は逆になっちゃいました。
作者が【よしのひろし】だから授業中【よしのひろゆ…し】になったことは内緒です。
おかしいなー。この授業やったの卯月(4月)なのになー。
ぐだんぐだんなので読んだ方はクレームでもいいので感想ください!